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「肉が食いたい!肉ー!」 「野菜であれだけ米食っといて何を」 大河家で夕飯をご馳走になった涼は、響の自室の万年床に仰向けに転がり手足をばたばたと振り回しながら一階に居る響の両親に聞こえない程度の声で文句をたれている。 大河家の食事は主に野菜。自宅の畑で取れた季節の野菜に、地産地消している土地の野菜。肉や魚は一切ない。味付けの調味料の種類も少なく、量もごく僅か。必然薄味となるが、その野菜料理をおかずに白米を五杯も平らげた涼。 「あんな飯ばっか食ってりゃそりゃ太りもしないよなー」 涼は響の母親を頭に浮かべる。 響の母はその歳に似合わずスタイルが良く、肌も綺麗で健康的だ。食生活と畑仕事が良いのだろう。今や土地の人間で響の母を知らない者はないくらい、田舎には似合わない美人。 ついでに言えば父も若々しい。 響が幼い頃、過労で一度倒れてしまった程当時はやつれていたが、この地に越してきてからはぐんぐん元気になった。 涼は自分の両親を浮かべ、思わず溜め息が漏れた。 若い時は痩せてた、が口癖のふっくらした母、脂っこい料理が好物で、妊婦のように張った腹を抱えてハンカチが手放せない父。 「そんなの、人と比べるものでもないだろ。オレは好きだよ、涼の両親。お前と同じで面白い」 「俺はまだ太ってねーぞ!」 「そうか、涼も将来ああなるのか」 涼が体を起こして飛び掛かって来たが、それをひらりとかわし部屋の角にあるタンスに向かう。畳に突っ伏した涼が歯軋りして響をにらんでいるが無視。 「泊まって行くだろ?ほら、着替え。風呂お先にどうぞ」 「おう!サンキュ!」 涼はころりと笑い、着替えを受け取り早速風呂に入るぞと階段を転がるように掛け降りて行った。 もう笑ってら。 涼が戻ってくるのを待つ間に宿題でも済ませてしまおうと、響はノートを広げた。 夜の虫の声、スタンドの蛍光灯の音、近所の家の子供の声。 田舎は音が少ない。けれどそのぶん、自然の音楽が楽しめる。響は問題を解く手を止め、虫の声に耳を傾ける。何だかまたうとうとして来て。 涼の布団も敷いていないのに、ああ、風呂にも入らなくちゃ、今日も暑くて、汗を沢山かいたから。 響は知らぬまに、またこっくり、夢に意識をとられていった。

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