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「なんだか、いろいろ、あったね」
沈む太陽が照らす空は
橙色と桃色のグラデーションに染め上げていた。
どこかの屋上。
転落防止の為の柵なんて
終身刑の罪人の檻の扉が空いているよう。
制服姿の少女は、両手を広げて世界を感じた。
ただ、太陽が後ろから照らす建物は
逆行でその物の色が分からない。
桃と橙色と黒で統一された、風景が広がる。
少女はそれしか感じなかった。
もしかしてよく見れば、信号の点滅に慌てて走る人がいるかもしれない。
柵の上に立つ自分を指差してる人がいるかもしれない。
空を行き交う鳥や、種子を空に放つタンポポの綿毛があったかもしれない。
それでも、少女は感じなかった。
それでも、この世界に必死に抗い、憎み、求め、愛した。
此処が答え、此処が終着点。
少女は元気に微笑んだ。空を仰ぎ、世界を噛み締めた。
「ここに、いる、から。」
そして、少女は…
♪
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