自己紹介なるもの

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今年も気が付けば残り数日。 窓から見える鉛色の空からチラチラと白い冬の使者が舞い落ちる。 ついこの前までエアコンのリモコンを取り合っていたはずなのに、今じゃうちのキグナス(エアコンの名前)は冷気ではなく温風を作り出している。 たいして新しくはない‥ いや、どちらかと言えば古い事務所。無駄に広く真冬となればエアコンだけでは暖まりきらないコンクリート剥き出しの室内は、良く言ったら今流行りの味のあるレトロな雰囲気だが、悪く言ったら廃墟ビル一歩手前のオンボロ雑居ビル。 「暇なんですけどーー!」 無駄にきれいに整頓された机に突っ伏し『暇だ』という俺はというと‥ キレる頭脳を持ち元検事という輝ける過去を無駄にぶら下げる俺こそここの事務所の主である久我悟(クガサトル) 事務所と言っても厳つい自由業(俗にいう【ヤ】さん)ではなく、れっきとした探偵である。 探偵といえば聞こえはいいが、探偵なんて職業はお世辞にも格好よくない。人探しだったり浮気調査だったり時にはお悩み相談までしている。 探偵と書いて『なんでも屋』とフリガナをふってやりたいくらいだ! 「あー暇だぁ!」 .
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