act.1

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      いい大人が4人もいれば余計狭く感じるが お世辞にも新しくもなく広くない事務所に穏やかな空気が漂う。 だが、そんな狭い空間に見知った人物達とお気に入りのタバコと香ばしいコーヒーの入り交じった匂いが堪らなく心地好く、安心感なのか胸が温かくなるようなきがする。 「あ、」 飲み掛けのカップをテーブルに置いたユキが小さく呟く 「ユキちゃんどうしたの?急に仕事でも思い出しちゃった?」 小首を傾げそう聞く望に違うよと言い、人の悪い笑みを浮かべたユキは人差し指であるものを指差す。 「ぇ‥?」 人差し指の延長線は俺のデスクにあるもの。 「ほら、あれ」 「あれって?悟くんの机に?」 言われるままパタパタと靴底を鳴らす望は俺のデスクに歩み寄りデスクに置かれたあるものの存在を確認し目を見開くと「あぁ‥」と言うと納得したかのように目を細める。 卓上の隅にひっそり佇む四角い後ろ姿。 最近じゃ百合がしっかり管理してくれてる所為かあまり見ることはなくなった数字だらけの小さな1ヶ月 至って普通の毎日が何だか心地好いのは平和な証拠か、はたまた騒ぎの前触れか。 ユキの言葉を理解した望はウフフと笑い百合に手招きをする 「なになに?ノンちゃん教えてよ」 興味津々な百合はカップを置くと望に駆け寄り耳に手を当て早くと急かす。   昔誰かが言っていた。 人の繋がりは前世の因縁。 前世で繋がってるから現世でも‥なんて でも俺は いらない繋がりなら切ってもいいんじゃないかと思わずにはいられない。 一度は愛し合った伴侶でも愛憎で相手を傷つける、血を分けた親子兄弟でも死に至らしめる世知辛いこの世の中。 必ず繋がっていなければならない縁はない。 切らなきゃならない縁だってある。 本当にお困りの際には探して見て下さい。場所は解りづらいかも知れませんが繁華街の片隅に週末だけ灯される明かりを目安に来て下さい。 「ねぇ百合ちゃん今日って何曜日?」 「え?火曜日じゃん‥?火曜日だ!!」 「てことは‥?」 .
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