第1章

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「一人で大変でしょ?私手伝うよ」 私の思惑に反した申し出をされたのは、夏休みに入ってからの事だった。 一年から付き合いのある友達と、悠美以外とは会うことも無く過ごしていた夏休み。 お盆が過ぎた頃、メールで学祭準備のために集まって欲しいと言われた。 私はオマケ担当だけど、作成は一旦置いておいて、クラスの一員としてそれを手伝いに行く事にしたのだった。 ちなみに、こんな感じで出来ているという写メを聞かれれば見せられるように用意しておいた。 だって、学校には置いておけないけど、イヤホンジャックがまるでこの模擬店の目玉みたいに扱われ始めていたから。 殆ど柴門君効果なのは間違いないけどね。 夏休みの課題や勉強、友達とたまに会ったりしながらもコツコツと作っていたから型を取ったクロスは既に規定数に達していた。 それ以外の作業が細々していて時間がかかるから、コツコツやってたし、多分問題無く間に合うんだけど。 看板やクロスのデザインを相談したり、家で作って来てくれた調理担当の子の試作品を食べたりしていた時だった。 そんな中、小酒井さんが嬉しくない申し出をしてくれたのだった。 皆に制作状況の写真を見せて、何だか褒めてもらったりした後の事だったから、間に合うのはもうわかっているハズなのに。 皆、試食に夢中で私と小酒井さんには気付いていない。 「あ、でも、間に合いそうだし、今は大丈夫…何かあったら、声かけさせてもらうね、ありがとう」 「いいよ、今から手伝うって」 「ううん、大丈夫。それに、家でやってるからさ」 「家行くし」 いや、それは図々しいでしょ。 私が引いていると「じゃ、そういう事だから」なんて言って、彼女は輪の中に戻って行ってしまった。 えー、どうしよう。 まあ、無視しとけばいいか。 そもそも個人的に連絡先知らないし、今日を乗り切れば家に来るなんて無理なハズ。 そう思ってスルーしていると、その日は何も無く。 むしろ夏休み中平和だった。
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