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夏休みが明けて少しすると、学祭がある。
クラスでの出し物は男女が協力してやらねばならず、男子と交流の無い私でも、話す機会があった。
彼だけじゃない。
けど、一番接する機会があったのは誰かと言えば彼だったと思う。
ただ、私は彼以外と接した事はあまり記憶に残ってない。
きっとそれは、既に私が彼を気にしていたって事になるんだろうけど。
そんな学祭が終わって少ししてからの事だった。
高校二年の夏が終わり本格的に秋が訪れたのを、涼しい風と脇道から覗くカエデの赤が教えてくれていた。
もう10月も半ばで、丁度一月程前に行われた学祭の熱もとっくに冷めて。
皆が中間考査を意識し出したのをピリリと肌で感じ始めた頃。
私だけはまだ、学祭の熱を身の内に燻らせていた。
その熱の正体も、その時の私には全然わからなかったけれど。
今からほんの半月前。
「英サンってさ、彼氏とかいるの?」
「…いないよ?」
突然、サラリと彼…柴門君が、そんな質問をしてきた。
いるように見える?
なんて、嫌味な返事はしないけれど。
私はあまりクラスの男子とも話す事は無い。
部活にも入っていないし、仲の良い女子数人とお喋りするのが日常だ。
だから、彼の質問はモテナイ私には少しばかり意地悪な言葉に聞こえた。
そう聞こえたのは、本当は彼が言ったからという理由だったかもしれないけれど。
どちらにしても、ちょっとだけ、気分を害したのは事実だった。
「マジ?!」
食い気味に身を乗り出されて、思わずのけぞる。
想像より、激しいリアクションに驚いた。
「マジ、ですけど」
「そっかー…あー…マジかぁ…」
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