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でも、私はそれを提案するタイプの人間じゃなかった。
出来るかもって思うと、正直作ってみたくてうずうずしちゃうんだけど。
樹脂粘土で金属の風合いを出すオブジェを作ってる作家がいたから、不可能では無いんだと思う。
「は~い!」
やってみたい、あぁでも…なんて思ってる私の斜め後ろから、能天気な声がした。
ちょっとアニメ声で、本人もちょっとロリっとした柔らかい色合いの、明るい茶髪を頭の天辺でお団子にした友人。
神田悠美。
二年になったばかりの4月。
偶々席が近くて少し話したらすごく懐かれた。
少し幼く見えるし顔立ちに派手さは無いけど、垢抜けた雰囲気で色白のすごく可愛い子だ。
「真優ちゃんがそういうの作るの得意です!」
………。
シーン。
一瞬で静まり返った教室の意味がわからず、キョトンとする悠美。
別に私が嫌われてるからとか、虐められてるからでは無い。
理由は多分三つ。
私がそこそこ地味なせいで、私の名前をまだ覚えて無い人が居るかもしれない事。
上記に続き、苗字はわかるけど、下の名前は知らない人が多いだろう事。
最後に、得意だと言われても、ほら、作成者に推薦するとか、何か言わなきゃダメでしょ。
「真優ちゃんて、英さん…だよね?」
微妙な空気になった室内。
空気を変える為か、発言してくれたのは柴門君だった。
私の下の名前を知ってる事自体驚きだ。
「うん、ね、真優ちゃん!」
「あ…うん」
無視するわけにもいかず、頷く私。
柴門君は少し考えて、
「じゃあ、次のLHRまでに何か案考えて来てくれる?皆もこういうのが良いってのがあったら絵とか描いて提案して。英さんは何か作って来てくれると嬉しい」
つまり、私の考えて作ったものが良ければ採用し、私のセンスがイマイチでも技術が良い感じなら誰かの案を採用して私に作らせようって事らしい。
よし、やってやろうじゃん。
私の負けん気に、その時一気に火が点いた。
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