第1章

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だけど、それなりに人気なんだったら、彼のバンドをイメージして作ってみたらどうだろう。 ネットで、アーティストのグッズを参考にして。 聞いてみようか。 彼のバンドについて。 そう思ったら行動は速かった。 苦手なタイプとは言え、学祭の事を聞くだけだし。 めんどくさいとかヤダって言われたら、もうこっちで好きにするつもりだったけど。 翌日、早速登校して来た柴門君の元に向かった。 ちょっと緊張したけど、そうも言ってられないし。 「柴門君」 「あ、おはよ、英さん」 念の為言っておくけど、私達は挨拶をする仲じゃない。 明るい人って、どうしてこんな簡単におはようなんて言えるんだろ。 「お、おはよう…あの、学祭で使うオマケの事なんだけど、いいかな?」 「ん、いいよ」 「柴門君のバンドの雰囲気をアクセに取り入れたいんだけど、いいかな?」 「俺の、バンド?」 柴門君が怪訝な顔をした。 まあ、そりゃそうだ。 自分のやってるバンドの雰囲気って、何それって感じだろう。 それでも彼は私の話を聞いてくれたし、一通り説明したら、少し考えてロゴが入るとか、露骨に自分のバンドの名前を出してアピールするような事がなければ良いと言ってくれた。 「柴門君て、ライブとかするの?」 「まあね…聞きにくる?」 「ううん、いい。私が作ったオマケと同じモチーフのアクセ作ったら、ライブで付けてくれない?」 「…いや、それは…」 「もちろん、出来が気に入らなかったらつけなくていい。良かったら、付けて」 どれだけ人気かは知らないけど、学校ではそれなりに目立つ存在で、校外でバンドをやってる男子が付けてるチャーム。 しかも、ライブで。 それを知れば実際自分が付けなくても、ちょっと欲しいかも…なんて女子は少なくないと思う。 つまり、柴門君が客寄せパンダになれば売れ行きもいい感じになるんじゃないかって、打算。 そんな私の思惑を知ってか知らずか「俺の持ってるのより良い物なら、着けるよ」と言ってくれた。 後は私次第。 「ありがと」 ライブやメンバーの写真を携帯に送ってもらって私と彼のファーストコンタクトは終わった。
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