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「かっこいい…」
一年生の教室のある一階を歩くと、新入生たちの視線を感じた。
「ううん!やっぱり有名人なんだな!困ったなあ!」
隣を歩いていた未歩が、先頭を切り、胸を張って歩き出した。
確かに、未歩は今時ギャルな風貌と裏腹に、長距離走で県内トップレベルの実力を持つ選手だ。でも、今、注目を浴びてるのは未歩じゃないだろう。
「さすが、生徒会長様だ。さっきの新入生歓迎会も決まってたもん」
ずんずんと歩く未歩を無視して、芳華が言った。
「別にあたし、カッコつけてるわけじゃないし」
香坂真樹。この西高の生徒会長。
あたしが目立つ、とかではなく、たったさっき、生徒会長挨拶を披露したのだ。部活動に入る前の新入生にとって、初めて認識した「先輩」なのだ。注目されるのも、自然なのかもしれない。
「そんなことよりさ、二人とも髪の毛明るい。違反者のいる部活は勧誘禁止にするよ」
未歩と芳華は、あたしたち3年生のなかで一番やんちゃな部類の生徒だ。「厳しいなあ…」「このくらいいいじゃん」と口々に言うだけで、直す素振りは見せないのだが、それでも根は真面目だから憎めない。
「じゃあ、茶道部こっちだから。またね」と、芳華が手を振った。
「またね!」「陸上部も負けないよ」
茶道室を過ぎ、昇降口まで来ると、見学に向かう新入生と、部の宣伝をする上級生で溢れてた。
「うわ!いっぱいいるね」
未歩は嬉しそうに下駄箱へ向かう。
生徒たちの間をすり抜けながら外まででるも、中庭までに人だかりができていた。
「全員グラウンドに連れてくぞ!」
張り切る未歩を横目に、校門の方に目を移す。
駐車場の方にもまだいないようだから、珍しいな、遅れているようだ。
「なに、新学期早々王子様のお迎え?」
「まあね」
おどけたように尋ねた未歩に、ふざけて返事する。
まあ、王子みたいなもの…かもしれない。
と、考えていたところで、校門に一台の車がやってくるのが見えた。
「じゃあ未歩、勧誘頑張って」
「ありがと。またね」
校門をくぐった車の方へ向かう。
寂れた校舎と明らかに不釣り合いのピカピカの外車は、案の定生徒たちの視線を奪った。
ぴったりと、あたしの前で駐車し、運転手が降りてくる。
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