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私の前に広がっている海。
心境とは確実にかけ離れた穏やかさが私を出迎える。
海面に乱反射する光が眩しい。
買いそろえてたばかりの釣り道具を準備して、ルアーを選ぶ。
私は釣りに関しては素人だ。
釣竿を思い切り振りかぶる映像を観たのは半月前のこと。
育児に疲れていた私にはその光景が、世界を変えることに充分だった。
釣りの餌さはダミーだ。釣れるのかどうかも怪しかったがそこらの蚯蚓を使うよりも精神的に楽だったというだけの話だ。
釣竿に糸とルアーを吊るして、海面なり湖面なりに垂らす程度の知識だ。
まさか、ルアーが鷹を調教するための道具と同じ名称だったなど知りもしなかった。
むしろそっちの知識をかき集めようとしたが土台無理な話だと諦めて海に出た。
なんてことはない。
育児疲れの鬱憤を晴らしたかった。
それだけだった。
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