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一方は体に矢が刺さり、見るからに満身創痍な男。
一方は全身金色の鎧に身を包み、仲間の期待を一身に背負った剣をもった少年。
「これで終わりだ!! はぁぁぁぁ!!」
掛け声と共に地を蹴った少年が黒髪へ肉薄し、手に持った剣で上から下へと男を斬りつけた。
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
対する男は、避ける余力も残されていなかったのだろう。
その光輝く剣に正面から斬りつけられ、苦悶の声と共にその場で崩れ落ちた。
「やった!勇者様!」
「ああ!!残るは魔王だけだ!!」
喜び合う少年少女。
そんな彼らをよそに、倒れていたはずの黒髪の男ががむくりと起き上がった。
「クックック………」
何が可笑しいのか、肩を揺らし不敵に笑う。
「まだ息が残って………っ!?」
息を呑み、再び臨戦態勢に入った少年達に対し男は息も絶え絶えに口を開いた。
「……ま、魔王様は…………俺とは比べものにならないぞ………。精々あがくがいい……!」
そんな捨て台詞を吐くと、本当に限界が来たのか、そのままばたりと倒れて動かなくなった。
辺りを静寂が包んだ。
「……し、死んだか……。はやく行こう。」
すたすたと先へ進もうと歩き出した一行。
「魔王……今の四天王より強いのか………!」
「正直、あれ以上となるととても想像がつきませんね………」
そんな会話をしながら、部屋の奥にあった漆黒の扉へたどり着き、ぎぃ…と音を立てて戸を開ける。
「待っていろ…………魔王!」
決意も新たな彼らを誘うと扉は閉じ、部屋には倒れた男だけが残った。
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