エルフの居場所

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私の学校にはエルフがいる。 耳が生まれつきとがってるらしい。 エルフは音楽を聴くのが好きで、いつもヘッドフォンをしている。 私は彼をまだ見たことがない。 エルフは人見知りだから、彼が信頼しないと、姿を見せてはくれない。 私は毎日この広い広い学校を走り回る。 朝、昼休み、放課後。 学校中を探し回る。 メールアプリのクラスのグループにはいるのに、話したこともあるのに、私は彼をまだ知らない。 今は十月。もうすぐ修学旅行。 エルフは来るのだろうか。 きっと今のままじゃこない。 だって同じクラスの、後ろの席の彼は。 まだ一度も教室に入っていない。 メールアプリを開く。 今や主流になったスマートフォンを不器用に扱いながら、エルフを見つける。 『ねぇ、どこにいるの?』 すぐにつく既読の文字。 でも返信は遅い。私と同じ。 『毎日頑張ってるね』 エルフからの返信はいつも顔文字がなくて、そっけない。私と同じ。 『全然見つからない』 四月からずっとエルフを追ってきた。 エルフは私を見ていると思う。 だけど自分の居場所を知らせず、笑っている。 『君はまだ探していないところがある』 パッと返信の通知。 探していないところって、どこだろう?辺りを見渡す。 校舎は隅々まで見たはずだ。 『僕は禁じられた場所にいる』 もう一度画面が光る。 『なにそれ?どこ?』 既読はつかない。 エルフははじめてヒントをくれた。 なにかが変わる、そんな気がした。
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