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九
大友が臨終した病院を辞して駅までの道を歩いた。
昨日大友が病室の窓から眺めていた桜の花が今日は少しずつ散り始めていた。
急に人恋しくなった。
こんな気分になった時、
行くところも電話する相手もない事に僕はその度再認識をさせられた。
いつもなら、
マンションに一人閉じこもり、
その気持ちが引き潮のように静かに引いて行くのを待つのだが、
金山の事を思うとこれからマンションに帰る気になれなかった。
立ち止まり携帯を取り出して着信履歴を呼び出した。
090で始まる十一桁の数字が二つだけあった。
一つは雑貨屋の李沙の番号で一つは三條の番号だった。
僕はカーソルをその内の一つに合わせた。
発信ボタンを押した。
三條は直ぐに出た。
「はい三條です」
「土師です。
ありがとうございました。
助かりました」
「終わったのか。
あっ、
一寸そのまま待て」
三條はそう言って、
人気の無い場所に移動したようだった。
「俺が調べた赤穂真由美こと天見優子は大友とどういう関係だったんだ」
「なんの関係もありませんでした。
僕の勘違いです」
「お前、
嘘ついてるな。
だって、
天見優子の住んでたところって、
大友の生まれたK町・・・」
「大友はさっき死にました。
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