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「なんて、 人聞きの悪いことを。 土師君。 俺は事実を真実にするために無い知恵を絞ったに過ぎない」  なんていい草だと思ったが、 三條の性格がかいま見れたような気がした。 「周りに他人はいないか」  突然、 三條が聞いてきた。 「いませんが」  僕はいつの間にか、 桜の花を追って見知らぬ公園のベンチに座っていた。 偶然にも公園に人は居なかった。 盛りを過ぎた桜を独り占めしていた。 「理由がある。 大友興産の四条畷を殺った犯人の身元が割れないんだ」 「割れないって、 何処の誰だかわからないってことですか」 「ああ、 そういことだ。 事件の後、 直ぐに顔やら指紋やら、 DNAは未だだけど、 兎に角、 大至急身元を割ろうと照会しまくった。 そしたら、 今朝方、 上の方から身元不明で処理するようにとの御達しが俺たちにあって、 そしてさっき正式に決定した。 勿論、 その事についての緘口令が直ぐに布かれたよ」  僕は唖然として、 返事が出来なかった。
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