第1章

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 確かに、好きなんだと思う。  春まではきっと自分の事を知らなかっただろう宮倉に気付かれるかもしれないリスクを侵しても朝、後ろ姿を眺める時間を止められない。  はぁとため息をついて、ここ最近こればっかりだと思う。  アルバムの彼の顔が薄らいでいるのはきっと今、宮倉を思っているからだろう。  もう一度写真をなぞった。去年、彼が結婚したと聞いた。それなりにショックだった。  でも宮倉がいたから大丈夫だった。  宮倉もいつかは結婚するだろう。  自分は永遠に見ているだけだ。  宮倉とどうなりたいとも思ってはいないけれど、宮倉が結婚したら…自分は泣くだろうなと思う。  彼を前にすると目が泳いで、胸が苦しくなる。  仕事だってやりづらい。  早くこの気持ちを捨ててしまいたい。  どうやったら諦められるのだろう、嫌いになれるのだろう。  写真が答えてくれるわけはないのにどうしたらいいかな、と聞いてみた。  自分は酔ってると思う。  この人とは会えなくなって、徐々に忘れていったように思う。  つい先日、彼が来ると聞いた同窓会に自分は行かなかった。仕事が理由だけど行きたいと思わなかった。  それは多分心が離れたということなんじゃないかなと思う。好きなら会いに行く筈だ。  宮倉に対する気持ちも離れてしまえばきっと消えてしまうのだろうか。
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