第1章

23/23

647人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
 あんまり仕事に支障を来しそうだったら異動を申請しようかな、工場付きは雑用ばかりで敬遠されるからあそこならすぐ行けそうだ。 それか宮倉を海営に推薦しようかな。  これもすぐ通りそうだ。  海営の顔見知りにそれとなく探りをいれたらどうやら宮倉は今回の異動を希望したと言っていた。  随分海営の課長に止められたらしいからきっと戻れるだろう。  個人的な理由で人を異動させるっていうのはいかがなものかと思うけれど。  どちらにしても何か、どうかしたい訳じゃない。  きっと勧められたら見合いもするし、結婚もするんだろう。  それが親孝行だろうし。  それでいいし、そうなるだろうと思うのにもやもやする。そうやって前に進むのが泣きたくなるくらい怖い。  もういい年なんだから怖いってないよな、と苦笑して欠伸が出た。  アルバムをもとに戻して歯を磨く。  単にごろごろしたかっただけで買ってしまったキングサイズのベットに身体を沈めた。  松浦の一番好きな時間だ。オーガニックコットンで特注したシーツは柔らかく、羽毛布団のふわふわ感とマッチして心地よい。  ここで意識が途切れるまでころころするのが松浦の幸せだ。  羽毛布団を抱き締めて、宮倉はきっとこんなに柔らかくはないんだろうなと思う。  そう思いながら意識はすっと落ちていった。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

647人が本棚に入れています
本棚に追加