第2章

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 旅行当日、コンビニの駐車場に車を停めると店の中から坂下が飛び出す姿がバックミラーに映った。  松浦が運転席から外に出ると山下に続いて瀬戸と宮倉が店内から出てきた。  「課長、お世話になります!あ、これ、コーヒーです」  「え、あ、ありがとう」  坂下は長袖のニットワンピースで、手には大きなバックを持っていた。  ピンクのバックはかわいいのだけれど一泊にしては大きいように見える。  ぴょこんと頭を下げてにっこりと笑う顔にはいつもの眼鏡がない。  坂下は右手に握っている、たぶん缶コーヒーが入っているんだろうレジ袋を松浦に差し出した。  「かっちょー、早速運転代わりましょうか?」  朝からやたらとテンションの高い瀬戸は黒い長袖のTシャツにジーンズ、黒のブーツで社より若い感じに見える。そしてにやにやしている。  「もう、いいって。…あ、荷物入れて、今開けるから」  瀬戸を一睨みしてトランクを開けた。松浦が振り返ると真後ろに宮倉が立っていた。  まさかすぐそばにいるとは思わなかった。息が止まった。  「……お世話になります」  「あ、……ああ」  「いい車ですね」  宮倉は黒のジャケットの下にグレーのVニット、ブラックジーンズでいつもと違って香水をつけている。  松浦自身はつけないのでブランドまでは分からなかったけれど柑橘系の爽やかな取っつきやすさと妙な甘さが混ざった匂いだった。  「そうかな」  「この車、確か誰かの貰ったって言ってませんでしたっけ?」  横から山下の声がしてそちらを向く。松浦はほっと小さく息をついた。  チェックのシャツにざっくりとしたニットを着こんだ山下も180近くある。  「おー、よく覚えてるなあ」  「まぁ去年聞いた話ですからね」  柔らかく笑う山下にちょっと癒された。
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