第2章

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 正面にたっぷりと取られた駐車場にはもう十台程車が停まっていた。  古い洋館を改装して造られた山水館は廊下で結ばれた別館があり、別館もまた外観は洋風に作られている。駐車場からは玉砂利のひかれた道を通る。  脇には庭が広がっていて紅葉が赤く色づき、山茶花が綻んでいる。  「うわっ、さみっっ!!」  車から降りるなり瀬戸は腕を擦り、トランクから皮ジャンを出した。  皆が荷物を出した後、松浦もジップアップのニットを着込んで荷物を取った。  「課長、……かわいい」  振り返った坂下がボソッと呟いた。  「ほーんと、課長、いつもかわいいっすよね」  そう言われて自分の着ている服を眺めてみた。  アウターの下はパーカーにジーンズ、いつもと同じ格好だ。  「かわいいなんて初めて言われた」  心外そうに眉を潜めた松浦に、山下がすかさず言う。  「何言ってんですか。いつも白井さんにかわいいかわいいって撫で回されてるくせ」  「あれはただの嫌がらせだ!!」  山下がしたり顔で笑いながら、こちらに視線を投げた。  「いや?、あれは本心かと思いますけどねぇ」  「本心って、……バカにしてるだろ?」  じとっとした目で見るとにやにやと山下が笑っているので横から軽く体当たりした。  「何すんですか、もー…」  「早く行きますよ!」  山下と話している間を割って、宮倉の冷たい声が響いた。  (うっ……、怒られた……)  しゅんとして山下を見ると苦笑いで肩を竦めている。  先に行った坂下、瀬戸はもう館内に入ってしまったようだ。  早足で玄関へと歩く宮倉の、その大好きな後ろ姿を松浦は小さくなって追い掛けた。  
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