第1章

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 参加者はほぼ男性で(課に一人づつ庶務の女性が配属されているので女性は8人)毎年半数の人間が宴会場で酔い潰れて雑魚寝する、という親睦会の名の通りある意味親睦の深まる旅行なのだけど、今年は……出来る事なら行きたくない。  もちろん行かないという選択肢だってあるのだけれど、立場上そんな訳にもいかない。  手にした書類に目を落としても耳に入ってくる週末の旅行話が松浦を憂鬱にさせ、ついついため息が出てしまう。  処理順を考えながら書類を振り分けていると、松浦はふと正面から視線を感じた。  顔をあげて目の前の四人を見たけれど、いまだに談笑している。  勘違いのようだ。  年かなと思いながら目線の先、デスクの右前にいる宮倉和敏(ミヤクラカズトシ)から目が離せない。  普段直視出来ない男の横顔をぼんやりと眺める。  宮倉は隣の山下と何か話している。  会話はよく聞こえないけれど、正面の坂下や瀬戸と同じタイミングで笑うからやはり週末の話だろうと思う。  不意に山下に向けていた宮倉の頭がすっとこちらに向けて動き始め、松浦は慌てて目を伏せた。  会話が盛り上がっていたから大丈夫かと油断していた。  ぼんやり見ていた自分がとてつもなく恥ずかしい。  焦りも混じった赤ら顔を手に持っていた書類を少し持ち上げて隠した。  宮倉はこっちを見ているのだろうか……、それが気になって目の前の紙を凝視しているのに内容が全く入ってこない。  見るに見れず悶々としていると坂下の華やかな笑い声が聞こえ反射的に松浦は頭をあげた。  四人で笑っている。  ほっとしながらも、見られてるかもしれないと思った自意識過剰な自分が嫌になる。  宮倉が自分を気にする訳がないのに。  情けない気分で視線を落とした先には処理を待つ書類がある。  自分は仕事をしにきているんだ、しっかりしないといけない。  気持ちを切り替えたくて松浦は小さく首を振った。  しかし効果はなく、仕事に集中したいと思うのに意識はやはり週末の旅行に傾いてしまう。
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