第2章

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 「山下さん、おっさんみたい」  「課長がいる前で俺におっさんって言うな?」  「なんだよ?年の話か?悪かったなサンジューダイで!」  「いや、課長はかわいいですからいいっすよ!サンジューダイ半ばには見えない見えない!今だってほっぺ真っ赤でかわいすぎだし」  「……やっぱりバカにしてる」  瀬戸に湯を引っ掻けると遠くに座った宮倉が少し寄って「ああ本当だ」と松浦に顔を向けた。  宮倉の濡れた髪、ほんのりと上気した頬は普段のやや冷たい印象をぐっと艶っぽくしている。  や、やややや、やばい、いいもの見た。  「せ、瀬戸だって赤くなってるよなぁ?」  山下に話を振るように装って反対側に顔を向ける。  さりげなく視界から宮倉を外す。  「そうですね、猿みたいにまっかっか!」  「なんすか?、それ!」  にたにた笑う山下はちょっと瀬戸に近付いた。  「いや、でも若いとつるっつるになるな、さすがは温泉」  「いはい、いはいって」  山下に頬をつねられた瀬戸が「かちょー」と泣きついたので「山下離してあげて」と松浦は苦笑した。  「もうやめてくださいよ!今日こそ君塚さんをおとぉーす!なんですから!」  頬を両手でマッサージしながらじとっと山下を見る瀬戸を松浦は凝視した。  「え!え?え!えー、君塚さんってあの、一課の君塚さん?」  「そうそう、瀬戸くんは君塚さんが入社したときからずーっと狙っていたんですよ、ねー」  山下を見るとさも楽しそうに笑う。  「……君塚さんって、一番似合うと思うんですよね、南女の制服……」  「み、南女?」  山下から瀬戸に視線を滑らせた。そこにはちょっと眉間にシワを寄せていい顔を作った男がいた。  「男のロマンです」  「……ロマン?」  首を傾げた松浦を見ながら堪えきれないといった風に山下が笑いだした。  「こいつ、彼女に南女の制服着てもらうのが夢らしいんですよ。っとにウケるわ」
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