第3章

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   隣の宴会場は、襖越しにも分かる程ざわついている。 姿勢良く襖を開ける宮倉の背中を見る。  幅があり、しっかり筋肉のついていそうな肩回り。  浴衣の袖から覗いている部分だけ見ても男っぽい筋のはった腕は太く、指は長い。  広い肩幅からするとウエスト、腰回りは締まっていてそこから伸びる足は長い。  (こんな人、女の子がほっておかないよな)  もし自分が女性だったら……と、考えてもしょうのない事を思ってしまう。  きっと報われることはないだろう、取り立てて特徴のある容姿じゃないし。  でも、好きだと言うことは出来るだろうな、と思う。 いや、出来ないかも……  松浦は宮倉が襖の奥に入っていくのをぼんやり見ていた。  つい見とれて足を止めてしまっていた松浦は、消えた襖から宮倉が怪訝な表情を浮かべた顔を出し「皆、揃ってますよ!」と小声で言うまでぼぉっと立っていた。  中は畳敷きので計4列の縦に並べられた膳が用意してあった。  二列が二人分ほどの間を離して向かい合うようにセッティングされている。  四、五席空席であとはみな出揃っている。  「こっちこっち!」  瀬戸が大きく手を振る。  襖から一番遠い列に瀬戸と山下が座っていて、その隣が二席空いている。坂下は……、見回すと女性は女性で固まって座っている。  楽しそうに話しているのでほっとしているとまた宮倉が「早く座って、」と小声で松浦を急かした。  
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