第3章

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 立ち上がった山下に瀬戸が「まじっすか!?あざーす!!」と目を輝かせる。  宮倉の席に来た瀬戸を見るとその向こうに山下とその後ろを歩く宮倉が見えた。  宮倉は振り返ると極悪面で松浦をギロッと睨んだ。  (ひ、……な、何なんだ!)  「ちょっ!今見たか?今の宮倉見たか?」  「え?」  瀬戸が首を回して女性陣席に向かう宮倉を見たがその時にはもう背中になっていた。  山下と宮倉が黄色い声に歓待されている様をぼんやり眺めていた。  胸がチクリと痛む、松浦は小さく息をついて顔を背けた。  正面へ向き直るそんな小さい動きで松浦の意識がぐらりと揺れた。  (あー、頭ちょっとぼーっとする……)  くらくらしている。  さっきの一気飲みが原因だろうと思う。  そういえば何だったのかな、また何かしたのかな?  宮倉の極悪面が鮮明に浮かんで思わず自分の浴衣を確認した。  特に乱れてはないと思うが、宮倉からみるとおかしいのかもしれない。  「……なー、宮倉って、瀬戸から見てどんな感じ?」  「どんなって……、あんな感じ、ですよ」  瀬戸は女性陣席を顎で指した。  宮倉は山下の隣に座り仏頂面で黙々と飲んでる。  「……つまらなそうだね」  「いやぁ、フェイクっしょ!?女の子に囲まれてつまんないわけないです!」  瀬戸はお猪口をぐっとあけた。  「そうだね……」  つまらないといいのにと思う、自分の願望だった。薄く笑って手元の猪口を揺らした。  「……課長って、あれから彼女いないんですか?」  「あ、……うん」  嘘をついている気まずさから言葉を濁す松浦の猪口に、瀬戸は酒を流しながら大きなため息をついた。  「……はぁーー、俺も課長も結構いいのに何でモテないんですかね?」  瀬戸が何をもっていいと思ったのかはよく分からないけれど取り合えず頷く。  唇を濡らす程度、酒を含んでいると真横から視線を感じた。瀬戸がじっと見ている。  「な、何?」  「……かわいーですよね、課長って」  聞いた瞬間ちょっと身を引いた。  「かわいいって……やめてくれよ」  「いーじゃないですか!山下さんにかわいがられて!俺もかわいがってほしいー!」  「……せ、瀬戸、」  
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