第3章

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 瀬戸の視線を追うように女性陣席を見ると宮倉が日暮さんの膝枕で寝ている。  さっきまで普通に飲んでいたのに。  見た瞬間胸がむかむかした。  「あれちょっとまずいんで連れて帰りませんか?」  「あっ、ああ、そうだね」  松浦は慌てて立ち上がったのだけど、立った瞬間ぐらりと頭が揺れた。  (ああ、やっぱ飲みすぎ……)  松浦はぱんと頬を叩いた。酔っている場合ではない。視界が揺れるしぼやけるけれど両足を動かして何とか宮倉のいる女性陣席に辿り着いた。  「あ、日暮さんごめんね。今連れて帰るから」  膝枕の日暮に声をかけると、日暮は赤い顔で微笑した。  「私はこのままでもいいんですけど」  肩を竦めて笑った日暮は松浦から見ても可愛らしい。 もし宮倉がこれを聞いてたら……落ちたかもしれない。  「宮倉?部屋に帰ろう」  肩を揺らすと宮倉は少し目を開けて声をかけた松浦を見ると目を見開いて飛び起きた。  くらりときたのだろう、頭を抱えた宮倉を瀬戸と松浦は両脇を抱え立ち上がらせると宴会場から連れ出した。  突っかかりながらも何とか部屋に運んで布団に横たえると、意識はあるようで「すみません、」と小さく聞こえた。  松浦と瀬戸は顔を見合わせほっと息をついた。  「宮倉さん、水飲みますか?」  「……いる」  瀬戸が聞くと眉をしかめた宮倉がよろよろと上体を起こそうとするので横に座った松浦はその背中を支えた。  不謹慎だけど背中に触れた手が震えるほど嬉しかった。    「大丈夫?」  横から覗き込む松浦を一瞥した宮倉は小さく頷く。  冷蔵庫を開けながら、瀬戸は松浦に聞こえるよう声を張り宮倉の状況説明を始めた。  「いやー、あの女性パワーっつーの?肉食ハニーパワーっつーの?酒入ると半端ないっすね、俺ひいちゃいましたよ」  「ん?何か凄かったの?」  背中の幸せに浸りながら瀬戸のいる障子の向こうに目を遣った。  「もー代わる代わる飲ませて飲ませて、断ると目をうるうるさせて、『アタシのオサケ、飲んでくれないんですね!!』っつーんですよ?それも宮倉さんにだけ!あれ絶対、襲うつもりでしたよ!!」  「いや、さすがにそれはないよ」  声のトーンを落とし大袈裟に言うのは酔った瀬戸の癖だ。  水の入ったペットボトルを宮倉に渡す瀬戸に苦笑すると、瀬戸は片手を違うと振った。
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