第1章

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 「まぁそっちも大変だろうけどさ、食うモン食っとかないとなぁ」  「うん」  「だいたい唯人はさ……」  やっぱり始まった……。  酔うと白井は松浦に長い長いお説教を始める。  もっと堂々としろ、自信持て……  同じことを繰り返す白井の上から目線なお小言にうんざりする。  そろそろお開きにしたほうがいいかもしれない。  松浦は電車は使わないけれど、白井は電車通勤でもう終電間近だ。  長い苦言を遮りさあ帰ろうと言いかけた時、  「あ、そうだ!そう言えば……」  と白井は宮倉が担当している澤田精機の新部品製造について話し出した。  澤田精機から受注した新部品の製造を社保有の四工場の一つで、精密を得意とする志水工場に依頼すると、そこまでの報告は受けていた。  だけど、宮倉は今回も製造期間の短縮をごり押しし、その上元々志水工場が受けていた四課の依頼を他工場に回させたらしい。  以前にも同様の件があり、全く報告を受けていなかった松浦は白井相手に愚痴を溢した事があった。  そのせいだろう、「聞いてた?」と何度も肩をつつかれ、松浦は苦笑した。  全く聞いていなかった。  工場との交渉はクライアントの意に沿うよう頑張ってもらわないといけない。  それはいいのだけれど、さすがに他課のモノを移動させたのなら報告が欲しいところだ。  勘定を済ませた後、歩きながら白井は、  「いやいや、海営出身だから何か分からんプライドがあるんだろ」  とバシバシ肩を叩くから松浦はよろけながらまた曖昧に笑った。  
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