39人が本棚に入れています
本棚に追加
「心のこもった浄霊、お疲れ様っ!」
センチメンタルに浸りたいというのに、場の空気を壊すような母親の声が聞こえた。
急いで涙をゴシゴシと拭い、への字口をして振り返ると、母親は柱に寄りかかって腕を組みながら、優しい表情を浮かべていた。
「カッコよかったよ。泣かなきゃもっと、カッコよかったんだけど」
「うっせーな。放っておいてほしいのに」
「半人前の息子がちょっとだけ成長したんだ、褒めてやりたいじゃないのさ。今夜は赤飯炊かないとね」
それはそれは嬉しそうに言ってくれたのだが、何かハズカシイ……
「今度好きになるコは三次元にしておくれよ。幽霊連れて来て彼女だなんて言ったら、私は迷うことなく除霊しちゃうから」
なぁんて言った台詞が現実化するなんて、やっぱり母親の能力は侮れないのかもしれない。だって幽霊の女のコってピュアなコが多いんだ。しかも可愛いんだ!
「何をやってんだい、お前は。それじゃあいつまで経っても半人前のままだわ」
呆れ返る母親を尻目に、今日も心のこもった浄霊をする。半人前が一人前になるように――
【了】
最初のコメントを投稿しよう!