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序
「もう、いい加減にしてください加川君! 毎回、毎回、図書リクエストに変なタイトル本ばかりあげて!こんないかがわしい本入れられる訳ないです!! 」
──と、メールや漫画の怒りマークを額にうかべた土御門安里は、自身の前に女子をはべらせ浮わついた空気をかもし出すイケメン、加川美理にかみついたが、暖簾に腕押しでさらりとかわされた。
「何で変だと思うの? 俺、安里ちゃんみたいな大人しい子はBL好きだと思ってたんだけどな」
「は? BL? 」
「あれれ? 知らないんだ? 」──こう語る、美理の言葉に取り巻きの女子達は“今時、BLも知らないの超ウケるー”と騒ぎだす。
「加川君が知っている事を知らなかったとしても、私はなんら困りません! 」
そりゃそうだ “やおい” を知らなかったところで人生まったく困りゃしない。間違って無いぞ、土御門!?(何で俺が知ってるかは聞かないでくれ!!)
「じゃあこっちはどう? 」
そういって美理が差し出したリクエストカードに書かれていた本のタイトルは青少年が買えない官能小説ばかり。
友達の品性を垣間見て、俺はこいつの友である事が恥ずかしくなる──美理の奴は土御門をからかって楽しんでいるのだ。
それは土御門も理解している様だが彼女の真面目な性格が災いして、ああいう類いの人間の言う事が受け流せないのが俺にも見ていて解る。
本のサブタイトルに含まれる“姦”なんて字はこういった子の嫌悪感煽ってるんだろうな。土御門の顔は顔面蒼白。
“ヤバイ” 俺は素直にそう思う。土御門と知り合いになってから数ヶ月たった最近解った事だが、この状態になってからのこいつを放置すると、間違いなく “キレる” のだ。
普段温厚な土御門が、ガチでキレるのを経験していた俺は美理の悪戯がエスカレートしないように手を打つことにした。
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