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「新しい司書神ね……。どう見ても貴方がサボりたかったからにしか見えませんが――まあいいでしょう」
そう言って俺の前に降り立ったのは一人の天使。ふわふわとした翼を持ち、白い聖職衣を纏った少女。紫色の長い髪に、銀縁のメガネをかけている。クソ真面目そうだ。
「いやあ、これで私も司書業から解放されて創造神としての仕事に専念できる。助かったよ、『――』」
先代神が俺の名前を口にした。その音の羅列を俺は認識できないと常々言っているのに。クソが。彼女もさすがにまずいと思ったのか「君が自分の名を認識できないのも不便だねえ」と笑った。
名前だけではない。自分の顔も、声すら認識できない。俺の神格はもう既に失われつつあるのかもしれない。
「なるほど。何やら珍しい事情を抱えているようですね――。私はメルヒェン。ああ、偽名です。貴方に名前がないなら私も本名を名乗る必要がないでしょう。メルとでもお呼び下さい」
よくわからない気の使われ方をしたな今。クソめ……。
「あと――その『クソ』というのは口癖ですか?」
なんだよ文句あるのかクソが――自分の声が認識できない、までは理解できるが、俺の思考が他の奴らにダダ漏れになっている現在の状態は今でも理解できていない。最初は悩んだりもしたが今は開き直ることができた。
「なんの解決にもなってないね」
煩いクソ先代神。
これがさっき後で話そうと言った俺の事情だ。こんな精神だけの存在みたいなので創造神試験に受かるわけないじゃねえかクソが。
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