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「今日はありがとうございました。」
大石は二枚目らしい爽やかな笑顔を見せる。
「いえ、こちらこそ。」
ペコリと歩と一緒に頭を下げた貴子に
大石が尋ねる。
「何か、僕のイメージ、ひらめきました?」
え・・・、と慌てた貴子は歩をつい見上げる。
そこは嘘でも、はい、と答えるべきだったのだが、
貴子の顔には何も、と出ている気がする。
秘書は貴子の顔を見て、疑うような顔をする。
彼は大石と変わらない年頃だが、さすが議員秘書。
そんな仕草にも貫禄がある気がする。
歩はすかさず貴子をフォローした。
「彼女は直観より反芻してイメージを固めるタイプなんです。
家に戻って、ゆっくり写真に向き合えば、
良い物が出来上がると思います。」
そうですか、と冷たい声を出す秘書に
貴子は身を縮めた。
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