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大石はさっきまでとはまるで別人だった。
紳士的な顔は緩み切って、面倒臭そうに耳まで穿っている。
そして、あっさりとさっきまでのイメージを覆す。
「俺さ、ガキ嫌いなんだよね。
オヤジが五月蠅いから、ここにも年に二回くらい来るけど
こんな田舎まで、本当に面倒でさ・・・」
はぁ、と歩が気の抜けた相槌を打つ。
秘書の男はもう注意するのも面倒な様子で
顔に怒りを滲ませているものの、無視を決め込んでいた。
大石はお構いなしに好き放題言う。
「俺、本当は世界一周とかしたかったんだよね。
子どもの頃から海外はあちこち行っているけど、
自分の操縦する飛行機で回ってみたかった。」
その言葉で貴子は資料で大石が小型機の操縦ライセンスを
持っていると書いてあったことを思い出した。
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