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藤谷の口調はいつも通りおどけた調子なのに、
それは叱り付けるような迫力を秘めているような気がする。
「ということは、君に才を見ている僕たちや彼らは
それが間違いだ、ということになるね。
要するに見る目がない、と・・・。
弾いて言えば、僕らにもその才がない。」
違います、と慌てる貴子に藤谷は一歩も引かない。
「いや、そういうことになる。
君が下らない人間だ、というなら、
君に惚れ込んだ僕らもまた同じ、ということだ。
そして、君よりそれは致命的だね。」
「・・・え?」
「だって、僕たちも彼らもそれを、感性を生業にしている。
それがない、と君に言われたら、
僕たちは無能な役立たず、ということになるね。」
「ちがう・・・、違います。
そんな、そんなつもり、私・・・」
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