<3>救世主、再び

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 頭痛と吐き気で美麗は目がさめた。全身が重くてだるくて、ひどい気分だ。  夕べ、気弱な弁護士から屈辱的な書類を見せられたあと、冷蔵庫に入っていた缶ビール三本を全て飲み干し、それでも足りずに、ワインセラーからお歳暮でもらったワインを取り出すと、泣きながらフルボトル一本をほとんど空にしてしまった。 ――そういえば、前にも同じようなことがあったわ。  自分がまだブサイクだった頃、美人の同僚の当て馬のように利用された苦い経験。そのあと、人生を一変させる出来事があったのだ。  あの頃は突然与えられた美貌に酔いしれて、まさかこんな辛い日が来るとは予想もしなかった。 ――人生山あり谷ありって、本当ね。  彼女はソファの上でむっくりと起き上がった。昨夜はベッドルームにも行かず、あのままリビングで眠ってしまったらしい。  とりあえずシャワーでも浴びようと立ち上がったとき、テーブルの上でスマホが鳴った。  夫からラインのメッセージが届いている。 ”今夜、もう一度話をしたい”  よっこらしょと再びソファに腰をおろして、美麗は返事を送った。 ”弁護士なんて、よこさないで”  男らしく自分が来たらどうなのよ、と彼女は心の中でつぶやく。 ”僕が行く”  やっと、待ち望んでいた返事が来た。 ”待ってるわ。逃げないでよ”  まるで決闘の約束のようなやりとりを終えると、美麗はスマホを置いて、深い溜息をついた。 ――何もかも、あの女のせいだ。  藤堂真悠子。和哉の若い美人秘書、そして愛人。  目をつむると、いやでも脳裏に真悠子の姿が浮かんだ。長いストレートヘア、ハーフのようなはっきりした顔立ち、スーツの上からでもわかる大きな胸と尻、くびれた腰、モデルのような脚。
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