第1章

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僕は商品だ。顔が・・・・・・体が・・・・・・声の出せない人形だ。 『さぁさ、始まりました、皆様、ごきげんよう』 ピエロが優雅に頭を下げる。頭の上の帽子が転げ落ち、拾おうとする。聞こえてくる音からずれた滑稽な動きで笑いを誘う。 次は僕の番。うまくしなければむち打ちの刑。うまくすればパン一つ。 薄汚れたからだを隠す、ライオンのたてがみのように揺らめく衣装を身に付け、震える手を握りしめる。 「次だ」 ドングリが飛び出した目でピエロもどきが睨み付ける。いや、昨年まではピエロだった。 操り人形のように動くのが得意な。 突然、傲慢を張り付けた怖い顔で僕の腹を殴った。 痛みに踞る。 「失敗しろ」 耳に囁きの言葉が残された。 「ほら行け」 歯を喰い縛って見上げたら、今度は彼、ゴキブリのような笑いをしていた。 涙なんか見せない。 顔を拭って舞台へ向かう。 テントの小さな隙間から見える青い広い世界に心引かれながらも、小さく薄ぐらい世界に僕は閉じ籠るしかなかった。 『さぁさ、見てください、小さなライオンの勇姿を。小さいながらも果敢に火に飛び込んでいきますよ。さぁさ、ご覧ください』 ステージにたつと目の前に現れるのは火の輪っか。 本来なら野獣どもの役目。でも戦争でみんないなくなった。 ライオンの代わりは僕。ライオンみたいな髪の毛だからと。でも今はその髪の毛もくすんでしまってライオンになんて見えない。 だから紛い物の服でみすぼらしい僕の体を覆う。
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