prologue

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男らしい、筋張った大きな手が好きだ。 一眼レフのレンズを支えて 見つめる目はいつもの穏やかなものとは少し違う。 ううん。 いつも違う。 温かく見守る父親のような目を見せる時もあれば 獲物を捕らえる肉食獣のように鋭い時もある。 じっとその横顔を見つめていたら 気付いた彼がカメラを降ろして苦笑いをした。 ”美優” 名前を呼んで、私の頭を引き寄せて髪を撫でてくれる。 旋毛にキスをして髪を梳き、耳にかけてくれる繊細な指先。 ”何か、哀しいことでもあった?” 優しい言葉しか紡がない、その唇。 その持ち主の名前を私は知らない。 だからきっと いつまでも埋まらないでいられるんだ この距離を、貴方が埋めると言うのなら。 ”貴女を救ってあげるから、恋に落ちてよ” その言葉は本心なのだと、信じてもいいですか?
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