第13章:愛しのラビリンス-後編-

14/25
前へ
/25ページ
次へ
優は完全に動きを止めて、兄を見つめる。 『同い年』の、兄を。 「そうだろ!?父さんはもう、死ぬんだよ!だったら俺は、これからは自由だ。もう野城家の人形じゃない。やっと解放されるんだ。ルナ以外の何処(どこ)の女と寝ようが構わないさ」 フィアンセも召し使いも いないからか、野城は"一気に吐き出せた"感が否めなかった。 言い終えた後、呼吸を整えるかのように、二、三回ハァハァと息をした。 そして優を見て、いつもの口調に戻り「ほら、早く行かないと」と言った。 「絶対 許さないからな」 優は唸るように そう言い放ち、やはり奈央子が反応する間もなく、体の向きを変え、エレベーターの方に向かって駆け出した。 奈央子の胸は、再びドクンと飛び跳ねた。 「優!!」 しかし、優は振り向かなかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加