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優は完全に動きを止めて、兄を見つめる。
『同い年』の、兄を。
「そうだろ!?父さんはもう、死ぬんだよ!だったら俺は、これからは自由だ。もう野城家の人形じゃない。やっと解放されるんだ。ルナ以外の何処(どこ)の女と寝ようが構わないさ」
フィアンセも召し使いも いないからか、野城は"一気に吐き出せた"感が否めなかった。
言い終えた後、呼吸を整えるかのように、二、三回ハァハァと息をした。
そして優を見て、いつもの口調に戻り「ほら、早く行かないと」と言った。
「絶対 許さないからな」
優は唸るように そう言い放ち、やはり奈央子が反応する間もなく、体の向きを変え、エレベーターの方に向かって駆け出した。
奈央子の胸は、再びドクンと飛び跳ねた。
「優!!」
しかし、優は振り向かなかった。
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