第13章:愛しのラビリンス-後編-

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奈央子は、右手を強く捕まれているせいか、痺(しび)れを感じ始めていた。 野城は相変わらず離す気配はなく、奈央子の行動を完全に阻止している。 「いい加減にしろよ…離せ。そいつをどうしたい訳?」 「『どうしたい』って?」 「結局おまえの目的は、俺を困らせたいんだろ。だから、俺は行く。そうしたらどうせ離すんだろ。奈央子は人質かよ、バカか」 それに対して野城が「さぁどうするかな」と言った時 「坊っちゃま!お止め下さいっ…」 と言う声に遮られた。 一瞬三人の動きが止まったかと思えば、近くにいたオッサンにハッと気付いた。 存在を忘れつつあったが彼は、こっちに戻って来てから三人の様子を見ていたのだ。 「一応…この敷地内では…。面倒な騒ぎを起こされては…他のお客様のご迷惑になりますから…と、言いますか、お二方の家柄を良く知る関係者も本日は多数見えてますので…あまりに」 「そうだね。」と野城。 それは無言の宣戦布告を意味する態度だった。 野城は奈央子の頭上で、クスッと笑ってみせた。 『腹違い』の弟に。
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