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「どうして俺たちはこの島にいるんだろうな……」
「クロウまでしんみりするなよなぁー。まったく」
ペトは頭を掻きながら座り足を伸ばした。
「俺はどうすればいいんだ?」
「俺はお前に付いていく、あの日そう誓ったからな。諦めるならそれで構わねえ」
クロウは腕を組んで枕にして呟いた。
「でもさ、出て行くならさ。船いるんじゃないか?」
ペトは頬を掻きながらクロウに言う。
「出て行く。 それもいいかもしれないな」
「だけど、無謀だろう? 人数が足りない。俺は行くか決めてないけど、そんな俺含めて三人。『精鋭』に選ばれた大人は20人は超える。そんな彼らが死んじゃうんだ」
ラックは目を瞑る。クロウはそんな彼を横目で見る。
三人は二時間ほど語らうと、その草原で何も言わずに星を眺めた。ただ、眺め、そして家路に着いた。
クロウは毎朝の走り込みを欠かさない。
ミオの町を出発し、小さな丘を全力で登り続けるというものだが、今日の彼は道中で足を止めた。
道中の草むらで誰かが倒れている。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。お構いなく、わたしはこう見えて丈夫ですから」
クロウは目を見開く、倒れていたのは昨日の魔女見習いだったからだ。
「げっ。お前か」
「あ、昨日の馬鹿犬」
見習い少女はいかにも魔女のようなローブをパンパンと叩き、クロウを睨む。
「なんでお前はここにいるんだ? こんな朝早くから……」
「失礼ですがその言葉そのままお返しします。それにわたしにはゲルダという名があります」
「俺はクロウ。早起きは鍛錬するためだ」
「わたしは薬草を煎じたかったのですが、少々材料が不足してたので……痛っ!!」
よろけるゲルダを慌てて支えるクロウ。彼女の右足のくるぶしが紫色に変色している。
「挫いたのか? ここは案外、道が悪い。気をつけるんだな」
「ちょうどそこの茂み。その奥の岩壁に白いの生えてるんですけど、喜んだ拍子に転んでしまったんです」
「待ってろ。取ってやる。どうせ暇だ」
クロウは茂みをかき分けると岩壁をよじ登る。
白い花を咲かせた草をもぎ取り、飛び降りる。そのまま元来た道を戻ると彼女に差し出した。
「ほらよ」
「あ、ありがとうございます」
クロウはそのまま彼女に背を向けてしゃがんだ。
「乗れよ」
「え?」
「そんなんじゃ、しっかり土が踏めねえだろ? また転んじゃ、立てなくなるんじゃねえか?」
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