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学校に着くと、クロウの予想した通りにラックはいなかった。
「リナ。ラックは? あと、ペト」
「知んない。あんなの」
リナはクロウを睨むとクラスメイトと会話し出す。
「おい、クリストファー。てめぇは知ってるか?」
教室で読書していた小柄な少年がびくりと肩を震わせる。
「あの二人なら、あの丘じゃないかな? 後は、校舎の外庭? 後は、川原? とにかく、今日は二人を見てないよ」
クリストファーは頭を悩ませる。クロウはその金髪を掴むと、強引に服の襟を引っ張る。
「何さ! 僕にも手伝えって言うのかい?」
「ご名答」
「学校は?!」
「休もう」
「うわあああああ! 離してよお!」
校舎の外庭に着くと辺りに目を配る。
「ここにゃ、いねぇ」
「そりゃ、先生に連れ帰られる可能性があるからね」
「それを早く言え」
続いて、川原へと歩く。島を流れる唯一の川。その川と湧水がこの島の貴重な水だ。
「いた!」
遠くの木陰ででペトが寝そべっている。
川ではラックが魚つかみに興じている。
「ラック! 話がある!」
クロウが声をかけても、ラックは上の空でただ黙々と魚を掴んでいる。
「クロウ。無駄だよ。ラックは今、放心状態だ」
「いい情報があるのにか?」
「何だそれ?」
ペトが身を乗り出し、いかにも興味津々といった様子でクロウの瞳を覗く。
「あのな……」
「クロウ!!」
怒鳴り声に近い、呼び声にクロウがばっと振り返る。湿りきった髪から雫がぽたぽたと垂らし、目をギラギラとさせているラックの姿があった。
「いいこと思いついたんだ。川で船を造る」
「馬鹿な。それは無謀だ。バレるし、それに島の周囲は崖。ということは必然的に川は『滝』になるんだぞ?」
それもかなりの高さ。滝壺に沈むか、水面でぶち当たり砕けるか、その二つが二人の脳裏に浮かぶ。
「俺の手下だろう?」
「そこで死んだら笑えるな。いいけどよ。ラックらしくねえぜ?」
そう、彼は焦っていた。世界を見る機会が掻き消され、動揺が隠せないのだ。
「まあ、そう言うなって。ラックも必死なんだろう。それよか、お前のいい情報とやら聞かせてもらおうじゃないか」
クロウの肩にぽんと手を置くとペトは期待0の顔で囁いた。
「そうだ。俺はひよっこ魔女をたぶらかそうとしてんだった」
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