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断崖絶壁に囲まれたその島は、孤島だった。名は『魔女の秘島』。
世界中探してもどの地図にも載っていない。載らないのは、この島が認知されにくい場所に存在しているからというのもあるが、実のところ魔女達の結界術のおかげであった。
その島の住人は3000人弱で形成された、世界で絶滅寸前の人間だった。
彼らは突如訪れた、『破滅の時』。その日から数百日、迫害の日々に耐え切れずに安息地を求め、やがてこの島にたどり着いた。
この島の、頂き。
周囲に何もない草原の丘で一人の長髪の美少年が横笛を吹いている。彼の名は、ラック。
「今日は風がきついな……」
海風で引っ付いた栗色の前髪をサッと払うと、少年は横笛を仕舞い横になる。
その丘は集落から離れており、人があまり来ぬ、彼のお気に入りだ。
そこにテクテクと歩み寄る人影がひとつ。大振りの剣を背負った黒髪黒目の少年。
「ラック。今日こそ、ケリをつけようか」
来るや否、彼はその長い剣を構えた。口元に笑みを浮かべ、寝転ぶラックを見下ろす。
「待ってよ。クロウは、『僕』に到底敵わない」
「だから、それをひっくり返そうという魂胆なのさ」
生意気な口調でクロウは淡々と告げる。
「僕は休みたいんだ。今日は動きすぎて疲れたからね。それに真剣で斬り合うのかい? ふざけてる」
クロウの腕がラックを持ち上げる。
「ここで死んでも構いやしない」
ふん、と鼻で笑い飛ばすラック。
腰に携えたサーベルを抜く。それほどの意志。クロウは先日の授業で耐え切れぬ、敗北感を覚えたのだ。
「いいよ。じゃあ、条件だ。
君が負けたら、もうこんなことやめてくれ。目障りなんだ。だから、『外』に行くときにさ、君は僕の仲間になってもらうことにしよう」
もう日が暮れかかる、そんな草原の丘に海風が吹く。
勝負は一瞬で決まった。
その決闘は、彼らをどう導くのであろうか?
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