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ラックは村随一の美少年だった。恋い慕う少女も多く。恋文に彼はいつも悩まされていた。
一方のクロウは、そんなラックを同い年ながらも慕っていた。昔のように同等ではないとクロウは感じていた。
ラックには、魅力とともに、技術、知識、何をするにも才能があった。
「ラックてさ、不思議だよな」
ある日、ペトが呟いた。
「不思議って、どう不思議なんだ?」
クロウは眉をしかめた。
「なんだか、魅了されるっていうか。最初見たときにさ、すぐ仲良くなりたいって感じた。頼りになりすぎて怖い、けど俺に向ける顔はいつも笑顔だ」
木にもたれながら、草笛を吹くペトは顔をクロウに向けた。
「お前もだよ、クロウ」
続けざまにペトは呟く。
「俺? 俺は笑顔なんてしょっちゅうしねぇよ」
「なんかさ、いいんだよな。見てるとさ、俺も加わりたい! って気にさせる」
ペトはぼんやりと遠く浮かんだ雲を眺めるとふぅとため息を吐く。
「なんだ、そっちの趣味あんのか?」
「ま、お前にゃわかんなくていいよ」
クロウは顎に手を置き、
「まさか、ラックに付きまとうオンナが欲しいのか?」
「なんでそうなる……。俺は女に苦労はしてないよ」
遠くから誰かが駆けてくるのが見えた。
「ペトー!」
いかにも町娘な服装で、ペト目掛けて飛んでくる女。
「女って……アイツ?」
「違うよ。アイツは幼馴染のリナ」
「ペトったら、午後の授業もほったらかして何してんの!」
腰に手を当てながら、怒鳴りつけるリナ。
「だって、この島の歴史なんて学びたくないし、神様も信じちゃあないから仕方ないよなぁ、クロウ?」
「俺は、剣を学ぶ」
「こんな脳筋に構ってないで、授業まだ残ってるでしょ!」
「俺はクロウに剣を教えてもらってんのー」
なぁっ、と顔を向けるペトに思わずクロウは頷く。
「ちょっと成績がいいからって……。クロウも、ペトをたぶらかさないでよね! 剣なんて古いわ」
「何! 撤回しろ!」
凄むクロウと睨み返すリナ。
「待て待て。落ち着け、二人とも」
「てめえのせいじゃねーか!!」
背後で足音が聞こえ振り返るクロウ。
「何してんの?」
遠くからラックが彼らの様子を窺っていた。
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