ハジマリ

6/9
前へ
/30ページ
次へ
「ラック! ペトとクロウが勉強しないのよー。一言言ってやってよ」 「君はこいつらを甲斐甲斐しく世話してあげるのかい?」 「だれがこんな能天気どもを……」 「じゃあいいじゃないか。彼らだって考えがあるんだよ」 「もう!! ……知らないから!」 学校に戻るリナに、肩をすくませるペト。 「あのヒス女。許さねー」 「まあそう言うな、幼馴染なんだ。ところでラック、なんか用かい?」 ペトが尋ねるとラックは、ああ、と呟き続ける。 「学校終わったら、とりあえずあの木の上に来い。そこで帰ってきたローガンたちを出迎えするための準備をしてから港に行こう」 「いよいよ、明日かぁ。嬉しいねぇ」 「港に泊まんのか?」 「許可はもらったよ。クロウ、君は遅れずに来てくれよ。荷物持ちなんだからな」 「へいへい」 爽やかなそよ風に吹かれ、彼らは胸をときめかす。 夢を乗せた船が帰ってくる。 それも、明日なのだ。 「じゃあ、僕は授業に出るから」 「えー、意味ないだろうよー」 その言葉で、にっと笑うラック。 「意味ないこともないんだ」 「へえ。俺はここでペトと遊んでるよ」 「好きにしろ。じゃあな。約束忘れないこと!」 木製の校舎にラックは駆けていく。 「学校なんてめんどくさいだけだ」 「まあ、クロウは農家になるか、大工になるか、漁師になるか、島を守る守衛になるか……って案外、力仕事多いな。うん、どこでも就けるよ」 「ちっぽけ」 「なんか言ったか?」 「別に」 「そうだ。嘘を真にしようぜ。剣の稽古頼むぜ!」 木刀を構えるペト。 「なんだそれ。まあ、いい。来いよ」 同じく木刀を構えるクロウ。 素早く踏み込み、懐に入るペト。そのまま腹を突くが、右に払われる。 すぐさま、右腕を叩く。しかし、それを軽々とクロウは受け止めた。 間髪入れずに、クロウが剣撃を繰り出す。 「このバカ力め!」 受けるだけで必死なペトは足で砂を巻き上げる。 「卑怯者め!」 「でも俺の勝ち」 クロウの首に木刀を添えてペトが言う。額に玉のような汗を浮かべて、「俺チカラねーもん」と呟く。 「正々堂々はないのかよ」 「そこまでいい奴に見える?」 「見えない」 「ラックはお前より強いの?」 「当たり前だ」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加