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「ラック! ペトとクロウが勉強しないのよー。一言言ってやってよ」
「君はこいつらを甲斐甲斐しく世話してあげるのかい?」
「だれがこんな能天気どもを……」
「じゃあいいじゃないか。彼らだって考えがあるんだよ」
「もう!! ……知らないから!」
学校に戻るリナに、肩をすくませるペト。
「あのヒス女。許さねー」
「まあそう言うな、幼馴染なんだ。ところでラック、なんか用かい?」
ペトが尋ねるとラックは、ああ、と呟き続ける。
「学校終わったら、とりあえずあの木の上に来い。そこで帰ってきたローガンたちを出迎えするための準備をしてから港に行こう」
「いよいよ、明日かぁ。嬉しいねぇ」
「港に泊まんのか?」
「許可はもらったよ。クロウ、君は遅れずに来てくれよ。荷物持ちなんだからな」
「へいへい」
爽やかなそよ風に吹かれ、彼らは胸をときめかす。
夢を乗せた船が帰ってくる。
それも、明日なのだ。
「じゃあ、僕は授業に出るから」
「えー、意味ないだろうよー」
その言葉で、にっと笑うラック。
「意味ないこともないんだ」
「へえ。俺はここでペトと遊んでるよ」
「好きにしろ。じゃあな。約束忘れないこと!」
木製の校舎にラックは駆けていく。
「学校なんてめんどくさいだけだ」
「まあ、クロウは農家になるか、大工になるか、漁師になるか、島を守る守衛になるか……って案外、力仕事多いな。うん、どこでも就けるよ」
「ちっぽけ」
「なんか言ったか?」
「別に」
「そうだ。嘘を真にしようぜ。剣の稽古頼むぜ!」
木刀を構えるペト。
「なんだそれ。まあ、いい。来いよ」
同じく木刀を構えるクロウ。
素早く踏み込み、懐に入るペト。そのまま腹を突くが、右に払われる。
すぐさま、右腕を叩く。しかし、それを軽々とクロウは受け止めた。
間髪入れずに、クロウが剣撃を繰り出す。
「このバカ力め!」
受けるだけで必死なペトは足で砂を巻き上げる。
「卑怯者め!」
「でも俺の勝ち」
クロウの首に木刀を添えてペトが言う。額に玉のような汗を浮かべて、「俺チカラねーもん」と呟く。
「正々堂々はないのかよ」
「そこまでいい奴に見える?」
「見えない」
「ラックはお前より強いの?」
「当たり前だ」
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