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魔女はこの島で絶大な支持を得ている。
というのも、この島の存在を教え導き、人々を平和な世界に引きずり上げたのだ。
『破滅の日』という、地獄絵図。
人々は未だに口にしないその言葉。
それは、人類史上最大最悪の出来事で、世代が変わった今もなお、忘れられずに酷い傷跡を残している。
慰霊碑の並ぶ、北の岬。
そこには、平和の像が佇んでいる。
魔女が手を伸ばす群衆を魔法で救った、その瞬間を切り取ったかのようなものだった。
だが、魔女は民衆をあまり相手にはしない。
かと言って、突き放しもしない。
魔女は世界をその目で深く深くを見つめる。
モニュメントなど、どうでもいいのだ。眼中にもない。
褒め讃えられるのも好きではない。
神格化する群衆に適度な距離を置いた。呆れなどではない。蔑むわけではない。
ただ、何もいらぬと、森の奥深くにこもりきってしまったのだ。
そんな魔女が人の目に触れるのは多くはなく、今回もまた珍しいことで民衆は困惑した。
敬い話に耳を傾ける。
魔女の言うことは正しい。
そう、思わざるを得なかった。
人は今、魔女に飼われる立場でもあるのだ。
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