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ぐるぐると回るような感覚。鼻をつく、焦げた酸っぱい臭いと、何かが騒がしい。
次いで轟いた男の叫び声に、海斗は一気に目を覚ました。
「ウァ、ア"ァア!!! アァア"ガアッ、グウゥッ!」
顔から煙をたてる男が、床の上をのたうち回って暴れている。
「!?」
海斗は床に伏していた体を慌てて起こし、後ろ手に這い、咄嗟に男との距離をとった。
背中に冷たく細い何かを感じ、勢いよく振り返れば、壁際に寄せられた何台もの机だった。
何だこれは。
ここはどこだ。
突然すぎる事態に、息をするのを忘れ、心臓が苦しい。
海斗は苦しむ男から、視線を反らし、今いる場所を確認する。
少し汚れた白い壁。左には綺麗なままの黒板。その横にテレビと、事務用の灰色の机が置かれていた。
寄せられている机は、台が白く、海斗の使うそれとは違ったが、確かに知っている一人用のものだ。
見知らぬ教室。
そして、海斗だけではなかった。
「グッァ、ア、ア!」
ダンッ!
ダンッッ!
呻き声と同時に、自らの足を床に叩きつける。
その様子に、立ち尽くしている六人の男がいたのだ。
全員海斗と同じ高校生ぐらいの年齢だろうか。
皆避けられるぎりぎりまで下がり、男の様子をただ見つめている。
その顔は皆、整っているが、今は一様に青ざめ、混乱の表情だ。
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