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悲惨なその現実に海斗は目を背けた。
とても見ていられない。
他の少年達も同様だ。
「クソッ! こんな場所に居れるかよ!」
金髪の少年は一人、吐き捨てて、ドアへと向かう。
ガタン。
ガン!ガン!ガンッ!!
ドアを蹴破ろうとするが、びくともしない。
「オイッ! おまえらも―――」
怒鳴りながら、金髪の少年が振り返った時。
プツ。
小さな音がして、突如事務机の横のテレビが点いた。
映ったのは、ピンク色のモコモコ、フワフワのうさぎのぬいぐるみ。
画面全体に、ただそれだけ。
金髪の少年は怪訝な表情でドアを離れ、画面が見える場所に引き下がった。
『ようこそ、忌まわしの旧校舎へ』
この現状に壮絶なほど似付かわしくない、ファンシーな物から発せられたのは、物騒な発言だが、可愛らしい少女の声。
『挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。その結果、思わぬ形で一人の犠牲者が出てしまったことは、ワタクシの落ち度です』
うさぎのぬいぐるみでなければ、もっと伝わるだろうが、とても真剣な謝罪に思える。
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