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最愛。
だからこそ、幸せにしてあげたい。
「螢……」
「……どうした?」
「螢、今は幸せ?」
「……聞かずとも分かるであろう」
初めて、螢の体を抱いた夜。
何度も何度も螢を求めて、その体を貪る貪欲な私は、事を終え疲弊する彼女が眠そうにしているのを見ながら聞いた。
幸せか、と。
「……幸せ、だ。
だから、このまま寝させて」
私の腕の中で、暖かな声を出し瞼を閉じた螢は……こんな毎日が続けば良いと思っていただろうか?
私は、こんな毎日が続く日が、いつか来れば良いと思っていた。
今すぐでなくて良いから。
未来に、そういう日の訪れを期待していた。
「桂。寝ないのか?」
いつか。
その、いつかという日を焦がれ、私はそれが欲しくて奔走する。
「寝るよ。おやすみ、螢」
愛しい螢と、私がずっと在るために。
螢。
君が後世から来たことを知った時、私が急(セ)くように夫婦になろうと言ったことを覚えているかな?
初めて抱いた夜、いつかを願った自分に後悔を抱いたよ。
いつか、を追いかけていては、駄目だと思った。
その、いつかを直ぐにでも現実にしなければ……更に後悔をすると思ったから……。
後悔をする。
きっとずっと、後悔する。
螢。
螢……。
「愛している」
愛を囁くのは、君にだけ。
欲しいものは、螢だけだ。
永遠に、そう思わせていて欲しい。
【終】
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