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「螢……」
腕に抱くその細い体にある無数の傷跡。
湯の中で、私に背を預けた彼女の過去は……とても過酷なものだと容易く想像できる。
腰から回した腕は、水を弾きそうな艶と張りのある彼女の肌に触れていて。
ギュッと力を籠めて抱き締めてしまえば、ここに彼女が生きていることがよく分かる。
愛しくて仕方ない。
この肌にある傷を知るのは、私だけでいい。
彼女の全てが、私だけのものだ。
そう思えるのは、螢が私に全てをくれると言ったからで……。
螢が私に惹かれ続けてくれることを願うから。
緊張しているのか、少し肩に力が入っている彼女の初々しい様。
「螢、こっちに向いて」
背を向けて膝に座らせたのは、私の計らいだけれど……、今、どんな顔をしているのか見たい。
見てしまえば、余裕なんて削がれるのは自覚している。
ここは湯船の中。
彼女の『初めて』が、こんなところでは……とも思うのに、抑えられない欲情が体を動かす。
「あっ……ンっ」
こちらに向かない彼女の顎を強引に取って振り向かせ、唇に触れた。
たかだか口付け一つに満足は出来ない。
舌を捩じ込み、どこか苦しげな声を漏らす螢の胸へと手を動かせば、育ったその柔らかな感触が益々削る。
理性を。
ジタバタしたいらしい螢の手が、力なく私の手に重なるけれど、『イヤ』ではないのだろう。
むしろ、どうすれば良いのか分からない。と言いたげだ。
愛していると告げれば、目から涙を溢す彼女が、舌を絡ませ息を溢す。
必死に、受け入れようとしている。
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