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「…………え?」
早見は目を丸くして、キョトンと俺を見つめた。俺も言ってからあれ? と思い、お互い何も言えないせいで、長い間沈黙が続く。
先に口を開いたのは早見だった。
「協力……って?」
小さく首を傾げながら聞き返されて、言葉に詰まる。協力するなんて、どう考えても自分で自分の身を滅ぼすような発言だった。
でも、言ってしまったからにはどうしようもない。勢いに任せるように続けた。
「ああ、協力。だって、早見が南雲を好きなの知ってるの、俺だけなんだろ?」
「そうだけど……でも、だからって、いいよ協力なんてしてくれなくて! 悪いって!」
「でも……」
「それに、南雲君、あのお守り自分で買ったって言ってたんだよ! 好きな人がいるから買ったんだよ!それを私にくれたって、それって望み無いんだし、それに……」
振られたわけでも無いのに根拠無く望みがないとか言う早見がもどかしくて、堪らず痺れを切らしてしまったのは俺の方だった。
「俺は、早見が好きなんだ!」
有無を言わせたく無くて、馬鹿みたいにでかい声で言ってしまった。それが早見に聞こえなかったわけが無い。当たり前だけど聞こえていたらしくて、早見の顔が林檎のように満遍なく真っ赤になった。俺の顔も火を吹きそうなほど熱いから、きっと似たようなものだろう。
「……望みが無いっていうのは、こういうことだ」
絞り出すようにやっとの思いで口にすると、早見は小さく頷く。頷かれても傷付くだけだったが、そんなの今更だ。
「だから、せめて……協力させてくれよ」
押し潰されたように胸が苦しかった。早見は俺から目をそらすように俯き、箒を正面で握り直して、もう一度頷いた。
「うん……わかった。頑張ってみる。…………ありがとう」
一体どんな意味で言われたありがとうなのかわからないけれど、俺は間違いなくその言葉に落胆していた。
翌日、学校に着けばやはり忌々しいそいつは涼しい顔で読書をしていた。教室の扉を閉めながらそっと深呼吸する。覚悟を決めて、席へと向かった。
自分の席に荷物を置いて、心を落ち着かせ、南雲を見る。
「おはよう」
声をかけても南雲の反応は無く、乾いた音をたてながら本のページが捲られただけだった。
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