隣の席の悪魔

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「何で教えないといけないんだよ」 「無いと色々面倒でしょ?」 言葉をそのまま返され、眉間に皺が寄る。不承不承に今しがた登録したアドレスに空メールを送ると、南雲の手の中の携帯が震えた。 「ありがとう。登録させてもらうね、東野君のアドレス。帰ったらメールしてもいいかな?」 「…………何でだよ」 「冗談だよ。じゃあ、また明日」 絶えずにこやかで腹立たしい限りだった南雲が教室から出て行った後で、頭をガリガリと掻きむしって椅子に座り、溜息をついた。 座ってからそういえばと思い出す。座った状態でしか話したことが無かったから気付かなかったけど、南雲の身長は自分と変わらなかった。俺も長身な方だけれど、それと同じということは、南雲はあの顔で長身なのか。 益々腹立たしい。 「なあ、明。何かあったのか?」 訝しげに声をかけてきたのは紛れも無く佐藤。 「何かって何だよ」 「お前朝も南雲と話してたろ。アドレスまで交換しておいて何も無かったとは言わせねーぞ」 野次馬根性や興味本位というより、心配が滲む声に、心が揺らぐ。けれど、誰にも言わないと早見と約束したのだから、例え親友の佐藤に心配されたとしても……。 「それは何というか、ご愁傷様だな」 ファーストフード店のカウンター席に、俺と佐藤は並んで座っていた。 「つーか、早見ってあんな奴のこと好きだったんだな。やっぱり顔かよ」 情けない事に、俺は佐藤にどう説明したものかと悩んだ結果、どう誤魔化しても誤魔化しきれなくて全てが伝わってしまった。 「早見はそんな子じゃない! 顔だけで選んだわけじゃない! 絶対に!」 「いーや、顔だな。何故ならイケメンにしか許されないシチュエーションだからだ」 それを言われてしまうと何も言い返せない。やっぱり顔なのか……そうなのか早見。でも早見みたいな良い子が顔だけで人を選ぶなんてそんな事考えたくない。 頭を抱えてうんうん唸っていると、佐藤に優しく背中を叩かれる。 「諦めろ、それが現実だ」 「嫌だぁ、ていうかお前に言われたくない……」 「うるせーな、大きなお世話だ! 俺だって見た目さえ良ければ通報されることなんて無かったんだ悲しいこと思い出させんな!」 どうやらお嬢様学校の前を徘徊していた結果通報されたらしい。それは本当に気の毒だが、全面的にお前が悪い。
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