隣の席の悪魔

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「で、アドレス聞いて、それを早見に教えるのか?」 「いや……俺と南雲が仲良くなって……そこから情報を聞き出したり早見を会話に絡めていこうかと思ってるんだけど」 「何でそんなまどろっこしいやり方するんだよ、普通に早見本人が南雲から情報を聞き出した方が早いだろ」 「……そうだよな」 それはわかってることだった。最初はそれを考えた。早見と南雲にまとめてメールを送れば、早見にも南雲にもお互いのアドレスが届く。そこからきっかけを作ってもらおうと、最初はそう思った。 思った……けど、早見と南雲が家でこっそりメールでやりとりをしている姿を想像した途端、耐えきれなくなってしまったのだ。 俺はまた頭を抱えて唸った。どうしようかと悩んでいると、スラックスのポケットに入れていた携帯がブルブルと震える。 確認すると、南雲からメールが届いていた。冗談とか言っていたじゃんか、あれは嘘か。しかめ面になるのを感じながら、メールを開いた。 『メールちゃんと届いた?』 たったそれだけの短い文章だった。届いてなかったらどうするつもりだったんだこいつは。いや、そしたら明日聞くつもりだったんだろう。 面倒だけど、仕方ないから返信する。 『届いてるぞ』 返事は一分も経たない内に届いた。 『よかった』 俺はそれに返信せずにポケットにしまおうとして、何か違和感を覚え、もう一度メールを開いた。結局違和感の正体はわからないまま、携帯はポケットにしまわれた。 来て欲しくない朝になって、俺は憂鬱な気持ちでベッドから出る。立ち上がると視界の端で何かが点滅していて、それが携帯だとわかり、机の上で充電されている携帯を手にとった。 メールが三通来ている。どれもスパムメールだ。登録した覚えの無い出会い系サイトから一通、何かの懸賞に当たったとかいうメールが二通。良い加減アドレスを変えたい気もしていたが、めんどくさくて後回しにしてしまう。 どうせだからと携帯をスラックスのポケットにしまい、顔を洗いに洗面所へ向かった。 いつもと変わらない身支度を済ませ、いつも通り学校に着き、いつも通り既に隣に南雲がいる自分の席についた。 「おはよう」 「おはよう、東野君」 南雲は朝から爽やかな笑顔で俺に挨拶をして、また本の世界に戻る。
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