隣の席の悪魔

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高校に入学してすぐは、友達が出来るか、なんて事を不安に思っていた。今思えばそんな事はそこまで心配する必要も無かった気がする。 本当に心配するべきは、友達が出来るかとか、恋人が出来るかとか、勉強についていけるかなんていう、自分の努力次第で何とかなる物じゃない。俺は今それを身をもって痛感した。 薄暮時の住宅街には、不気味なほど俺たち以外誰もいない。 目の前のそいつは、重なった唇を離すと、日常会話を楽しむのと変わらない笑顔で、淀みなくもう一度言った。 「だからね、僕が好きなのは君なんだよ」 本当に心配するべきなのは、常識なんて通用しない、誰にも理解されない孤独だった。 一学期が終わり、夏休みがあけて久々に顔を合わせたクラスメートは、懐かしさよりも奇妙さが目立った。 久し振りと気軽に挨拶出来るほど変わらない奴もいれば、一夏の間に何があったのかと問いたくなるような変化を遂げた奴もいて、知らぬ間に付き合っていた奴もいた。 そんなクラスメート何人かと適当に挨拶をしてから席につき、ソワソワと時計と扉を何度か見比べる。 程なくして、その子は教室の扉を開けた。その途端、俺の心臓が燃え上がるように強く鼓動を打つ。 夏休み前は背中まで届いていたセミロングの髪が、肩につくかどうかという短さになっていたけれど、綺麗な黒髪は染められた様子も無く、綺麗なままだった。女の子らしい明るい表情と元気な声も健在だ。 俺はそれだけで嬉しくなって、勝手に頬が緩む。 早見ユキは、俺の好きな早見ユキのままだった。 教室に入って直ぐに友達に声をかけられた早見は元気に手を振って、久し振りだね!と笑顔を見せる。それを遠目に見て可愛いなと思わずにはいられなかった。 早見は立ち話もそこそこに、机に鞄を置きに席に着く。俺の直ぐ前の席だ。
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