隣の席の悪魔

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佐藤のダラダラと長い夏休み前と変わらない姫君の話に適当に相槌を打っていると、直ぐにホームルームを告げるチャイムが鳴る。 ホームルームは、夏休み中に何があったかということをいくつか言われただけで気になったことは特に無く終わった。ただ、夏休み中にはしゃいだ生徒がそのままのノリで学校に来ないように、と酷く釘を刺された。 今はどの学校でも、不純異性交友は特に厳しく禁止されている。どの高校だかは忘れたが、去年、恋愛関係で校内で生徒が自殺した事件が世間を賑わせたせいだろう。それ以来、どの学校も厳しく目を光らせているそうだ。 それでも恋愛をするのは、健全な高校生ならどうしようもない。つまり先生が言いたいのは、夏休みの気持ちのまま校内で目立っていちゃつくなということだ。 そう、だから俺は、早見と付き合うことを諦めているのだ。 始業式も終わり、今日はそのまま帰っていいことになっていた。佐藤は姫君に会うんだと意気込んで全速力で女子校へ向かった。 俺は帰りたく無いなとぼんやり考えながら、席に座る。早見がじゃあねと手を振って教室を出て行った後で、友人にどこか寄ろうと誘われたが、金が無かったから断った。教室に誰もいなくなってからやっと帰る事にして立ち上がった時、何かを蹴って、鈴が鳴る。 足をどかすと、赤というよりは朱色と言った方が合っているような色をしたお守りが落ちていた。拾ってみると、まだ新しい物のようだ。 見覚えは無かったが、鈴の音に聞き覚えがあった気がした。でも鈴のついたお守りなんて持ってる人は何人かいるだろうし、その内の誰の物とも分かるわけが無い。 表を見ると、恋愛成就とだけ書かれている。男がこんな物を平気な顔をしてぶら下げてるとは思えないし、女子のだろう。 どうしようかと考えながらもてあそぶように鈴を鳴らすと、ほぼ同時に教室の扉が勢い良く開いた。ビックリして扉を見ると、肩で息をした早見が立っていた。俺の手の中で鈴がもう一度鳴る。
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